まずは、きゃりーの『Oh! My God!! 原宿ガール』(ポプラ社)から。高校まではファッションに興味はあっても「はっきり『こういう服が着たい』という意思みたいなものはなかった」というきゃ りー。友だちの影響で、どちらかというとギャル系だったらしい。しかし、高校1年の秋に原宿で声をかけられ、雑誌のスナップに出たことから「どういうコー ディネートがおしゃれかな」と考えるようになったそう。
きゃりーのおしゃれの秘訣は、「自分が好きな服を着ること」。お手本にしてるのは、“遊び心たっぷりで色づかいが斬新な”1960~80年代のファッ ション写真と、レディー・ガガをはじめとする洋楽のPV。また、母親の影響も強く、おしゃれに目覚めてからは母親が若いときに着ていたカラフルな洋服や靴 を借りるようになったという。「人と絶対かぶりたくない!」と語気を強めるきゃりーにとっては、「お母さんの服なら、何十年も前のデザインだから誰かとか ぶることがほとんどない」のも大きなポイント。お金をかけず、工夫することで個性を出す……そんなきゃりーのファッション観がよくわかる。
一方、美輪は『天声美語』(講談社)で、「お洒落に法則なし」と説く。しかし、シンプルなオシャレを強いる評論家には手厳しく、エリザベス女王を例に とって「ティアラ、イヤリング、ブローチ、ブレスレット、指輪……とすべて身につけた満艦飾。それこそが正式で王道だということを、かわいそうに、自分た ちの姿をタナに上げ、貧乏くさいえせ評論家たちは知らずにいるのです」とメッタ斬り。「装飾過多。楽しくって大いにけっこうじゃありませんか」「“いった い何だろう”と思わせるのが遊び心で、それが許される“個”を確立していくことがお洒落になるということです」と述べている。また、前出の『原宿女子』の インタビューでも、美輪は、日本の「幽霊や怪物でさえユーモラスに面白おかしくするセンス」が受け継がれ、いま、原宿のカワイイ文化として開花したと分 析。「日本もカラフルな時代になってきて嬉しいですね」と喜んでいる。
きゃりーと美輪の“新衣装対決”は、いまや世界に誇る原宿ファッションのポップアイコンと、唯一無二の美意識で“個”を貫いてきた先人が相対するとい う、なんとも運命的で歴史的な巡り合わせ。とくに「みんなと違うことをするのが怖い」という同調圧力が強まっている昨今、2人の“多数派に左右されない” 態度は清々しいもの。さて、いったいどんな満艦飾が観られるのか。大晦日が楽しみだ。
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